とあるありふれた帝国兵の話

とあるありふれた帝国兵のお話 第7話 【天敵との邂逅】

コロッサス6機、途中合流した分隊とあわせて30人以上の歩兵、最新装備の自分

そのこくごとくが一切通じず、結果として大敗を喫した

 

 

運が味方したのは奴らにだった

 

 

手配中のシド・ガーロンド、さらにネロ・スカエウァまで補足し、例のブツまで目の前に迫っていたのに負けた

たった数人に、完膚なきまでに叩きのめされた

ネロ・スカエウァの魔導アーマーが強力だったことは確かだ

天才と言われた男の特別仕様……弱いはずがない、それはわかる

それを差し引いてもたった数人の相手にコロッサス6機と30人以上が敗北する

 

初戦で味方も自分が舞い上がっていたということもある、味方を巻き込んだ攻撃などあってはならないのも理解している

だが、なぜあそこまで圧倒的に負ける?

 

戦闘は数であり単位のはずだ、数の有利が働かない戦場などもはや戦争ですらない

それはまるで……

「天敵だよ、あいつらは」

折られた腕をかばう様に、友が傍らに座り込む

 

ここはカストルム・セントリ救護室

カルテノーの古代遺跡から命からがら逃げのびてきた者がなけなしの医療器具で治療を受けていた

命を落としたものも当然いた……きっと落とした者の方が数は多いだろう

「あんなのは戦闘でもなんでもねぇ……数の差なんてなんの有利にもならなかった、まるで猫と鼠だよ、狩られるために仕掛けたようなもんだ」

天敵……最初から勝ち目のない虐殺だったとでも?

「虐殺って言い方の方がしっくりくるなぁ、うまいこといいやがる」

折れた腕のさすりながら、鼻で笑う友人

「第XII軍団が兵力をかけないわけだ、あんなのまともに相手しても割に合わなすぎる……あれが噂のガイウス様と超兵器を撃破したエオルゼアの英雄様ってやつなんだろうな」

全員がすさまじい強さだったが、一人だけ桁外れに強い奴がいた

どこにでもいそうで、でもすごい存在感で……まるでこの世界ではない特別な力を持っているような圧倒的な……

 

あれが、英雄

 

「お前が逃げてくれてよかったよ、コロッサスが落ちた時にもう駄目だと思って全員で逃げたのにお前だけなんかわめきながら一人で戦いだすんだからな」

無我夢中だった、正気を失っていたともいえる

 

「……いいか、今俺たちが生き残ってるのは運が良かった以外の何物でもねぇ」

友人がギロリと睨みつける

「あいつらは俺達にとってはゼノス様と同じくらいの天上の強さだよ、天敵だ 絶対に勝てないから捨て鉢になって戦おうとするな、やばくなったら逃げろ!」

子どもを叱りつけるように、静かに語気を強めてさらに言った

「いいか、俺はもあいつらと戦うことになったら絶対に逃げる お前を置いてでも逃げる!鼠は猫相手には戦わねぇよ、だからお前も俺を置いてでも絶対に逃げろ!」

天敵……絶対に勝てない敵……

「俺たちは生きるのに必死のただの凡人なんだ、生きて生きてしぶとく生きぬいてよ、楽しい人生おくろうぜ 逃げるが勝ちってときもあらなぁ」

……わかった、約束する やばかったら逃げる

「おう! 俺も逃げるからよ、どっちが死んでも恨みっこなしな」

屈託もなく笑う、つられて笑うと斬られた腕の傷に軽く響いた

 

 

ひとしきりくだらない話をした後、救護室のドアがノックされた

「よっしゃ、言い訳しに行こうか」

よし、行こう

自分の首と、行きずりの縁だったけれど一緒に戦ってくれた部下の首を守りに―――

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